業者はあなたに頭を下げているのではない

ビジネスマナー

 
これまでは社内外におけるコミュニケーションを中心としたマナーを述べてまいりましたが、後半は商談時におけるマナーについて述べていきます。
今回は、発注者としての立場から、あるべき対応姿勢を見ていきましょう。
 
■IT業界の構造
 
IT業界においては、大規模な受託開発案件には建設業界と似たような「重層下請け構造」が見られます。「一次請け」がベンダーやSIerと呼ばれる企業であり、その傘下、末広がり型に「二次請け」「三次請け以降」の企業があまた存在します。
 
 一次請け企業は大手企業であり、難関な狭き門を潜り抜けて入社した人材が数年間の開発経験を積んで、管理側へと移行していきます。(プログラマからプロジェクトマネージャ―へ)
 これに対して、二次請け以降の企業は中小企業が多く、多様な人材が主に詳細設計や実装を担っております。このレイヤーになってくると、オフショア企業と呼ばれる海外企業も多く存在します。
 こういった構造の中で、一次請け企業であれ二次受け企業であれ、発注者側に立つ人材はともすればその傘下の受託企業に「上から目線」で接しがちになります。
 受託企業は業務を継続的に受注せんがために、発注者に対して非常に気を遣いながら接してきます。お世辞、接待、特別値引きなど、様々なアプローチがあります。ますます発注者がその優越性を“自分の偉さ”だと勘違いすることにつながります。
 
■勘違いが不幸を招くことも
 
下請け業者は発注者に頭を下げてくるのではなく、発注者が背負っている企業の看板や開発案件の旨味に頭を下げてきているのです。発注者としてあまりにも無礼な態度を取っていた場合、本人の異動時や、下請け業者が案件を失注した時を機会にして、次のような結果を招くことがあります。
・下請け業者からのSNS等への匿名の書き込みによって、発注企業が甚大な風評被害にあう
・下請け業者が発注企業から知り得た重要情報を業界内にリークしてしまう(競合企業へ資産性の高い情報が伝わる)
・下請け業者が「全国中小企業振興機関協会」へ駈け込んでしまう(下請法違反が問われる場合)

これらの結果、発注企業は有能な人材や協力企業を獲得できなくなったり、受注競争力が失われたり、コンプライアンス違反を世間から咎められたりすることになったりします。
 
■あるべき対応姿勢
 
・謙虚な姿勢で企業間取引に臨むこと
 1社では案件消化ができないので企業同士が手を組んでいるわけです。文字通り「協力会社」として相手企業を尊重しながら“価値交換”をしましょう。
 
・相手企業の価値に気が付くこと
 発注金額で買っているのは目に見える成果物だけではありません。品質、労働生産性、スピード、技術力、経験、柔軟性、コストメリット、保守性、など様々なバリューを対価と引き換えに頂いていることを肝に銘じましょう。
 
この観点をもって相手に接していれば、自ずとあなたの態度に現れ、それがひいては企業姿勢として相手に伝わり、その結果、言葉だけではない企業同士のWIN-WIN関係が構築できるのです。
 
では、次回はそんな良好な関係構築が実践できる発注者マナーを、具体的に解説していきましょう。
 
 
 
 

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Team ladybird
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